2014年4月30日水曜日

《ラ・ボエーム》の魅力:ボヘミアンたちの生き方

《ラ・ボエーム》は、19世紀パリの下町に住む若者たちの夢と恋と友情を描いたプッチーニの最高傑作です。1896年、トリノでの初演以来、世界的な人気演目となり、今でも多くの人に愛されています。今回は、本作の大きな魅力にもなっている、貧しいながらも陽気に生きる「ボヘミアン(=放浪芸術家)」たちの人間性や、生命力と活気が満ち溢れる場所「カルチェ・ラタン」についてご紹介します。

2014年4月25日金曜日

《ラ・ボエーム》みどころ:フレッシュな人気歌手が勢揃いした必見の舞台!

石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)

 小雪のチラつくクリスマス・イヴの夜。貧しい芸術家がたむろする、パリのカルチェ・ラタンの片隅で、詩人のロドルフォとお針子のミミは、ひと目出逢った瞬間、宿命の恋に落ちる・・・。プッチーニの大傑作《ラ・ボエーム》は、まさにオペラの中のオペラ。甘く切なくやるせない、美しくもはかない若者の恋を描いた本物の純愛物語だ。 

屋根裏部屋に住むミミは、蝋燭の灯を借りにロドルフォの部屋をノックする。風で灯が消え、真っ暗闇の中で二人の手が触れ合う。「なんて冷たい手、ぼくに温めさせてください」とロドルフォが歌い出し、それに応えてミミは〈私の名はミミ〉と自己紹介する。最高の聴きどころとなる2つのアリアだ。

 こんな美しいラブストーリーの場合、演じる歌手はとても重要だ。声ばかりでなく、若さと容姿も絶対条件になるからだ。今回のプロダクションは若手で人気の美男美女ばかりが、ずらりとキャスティングされている。ロドルフォ役は輝かしい高音と情熱的な歌唱が持ち味の、甘いマスクのイタリア男、ヴィットーリオ・グリゴーロ。 

 ミミ役のクリスティーヌ・オポライスは、ラトビア出身で超一流歌劇場で活躍する実力派の美人ソプラノ。ライブビューイング収録当日は、予定されていたミミ役のアニータ・ハーティッグが流感でダウン。前夜《蝶々夫人》を歌ったばかりのオポライスに、翌朝オファーが入り、急遽代役をつとめたのだ。24時間に2つの役でMETにロール・デビューしたのは、MET史上初のことだという。 


オポライスは緊迫感のあるよく透る声を持ち、演技力も抜群。楚々として芯のある、けなげなミミ役にぴったりで大喝采を受けた。ムゼッタは、いまやMETのアイドルになった若くキュートなスザンナ・フィリップスが好演。マルチェッロ役はイタリアの美声バリトン、マッシモ・カヴァレッティ。フレッシュな顔ぶれの若々しい華やかな舞台に、METは大興奮に包まれた。
 
MET版《ラ・ボエーム》のもう一つの見どころは、名監督ゼフィレッリが手がけた、METの顔ともいわれる大掛かりな伝説の舞台。細かい小道具にもこだわるリアリズムを追及した第1幕は、雑然として本物の屋根裏部屋のように古めかしい。第2幕のカルチェ・ラタンの雑踏は、総勢数百人が乗るという2 階立ての大舞台。幕が開くとその豪華さに必ず大拍手が巻き起こる。幕間の休憩では、人を乗せたまま移動するみごとな場面転換も見どころだ。
 
 激しくもはかない恋に酔いしれ、プッチーニの甘い旋律をじっくり味わいたい方、この《ラ・ボエーム》は必見です。
(c)Marty Sohl/Metropolitan Opera
(c)Jonathan Tichler/Metropolitan Opera

2014年4月24日木曜日

《ラ・ボエーム》確定上映時間のご案内

5月10日(土)より公開の第8作プッチーニ《ラ・ボエーム》の上映時間が2時間54分(休憩2回 10分)に確定いたしました。

詳しいタイムスケジュールはこちらです↓

2014年4月10日木曜日

プッチーニ《ラ・ボエーム》視聴

                                        ※更新日4/10※
8作 プッチーニ《ラ・ボエーム》
上映期間:510日(土)~516日(金)
指揮:ステファーノ・ランザーニ    演出:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ヴィットーリオ・グリゴーロ(ロドルフォ)、クリスティーヌ・オポライス(ミミ)、スザンナ・フィリップス(ムゼッタ)、 マッシモ・カヴァレッティ(マルチェッロ)、パトリック・カルフィッツィ(ショナール)、オレン・グラドゥス(コルリーネ)、ドナルド・マックスウェル(ブノア)
MET上演日:201445日     上映時間:2時間54分(休憩2回)
ミミ役で出演予定だったアニータ・ハーティッグが体調不良のため、急遽降板となりました。代わりに、クリスティーヌ・オポライス(Kristine Opolais)が代役を務めます。

ヴィットーリオ・グリゴーロ 〈冷たい手を〉 ※音声のみ



2014年4月1日火曜日

《ウェルテル》確定上映時間のご案内

4月12日(土)より公開の第7作マスネ《ウェルテル》の上映時間が2時間59分(休憩1回 10分)に確定いたしました。

詳しいタイムスケジュールはこちらです↓

最高のキャストと演出!《ウェルテル》現地レポート

原作のゲーテ著『若きウェルテルの悩み』を読んだことがある人は、そのロマンチックな悲劇に心を痛めたことがあるのではないだろうか。出版当時、ヨーロッパ中で爆発的な人気になったゲーテの実体験に基づくこの小説。青年達はウェルテルのようにブルーの燕尾服と黄色いベスト、ブーツを身に付け、涙を入れた小瓶を持ち歩き、何と自殺する者まで出たという。

ゲーテ青春の恋 『若きウェルテルの悩み』

マスネ作曲のオペラ《ウェルテル》の原作はゲーテの有名な小説『若きウェルテルの悩み』。1774年に刊行され、18世紀のヨーロッパを席巻し、ゲーテの名を世に知らしめたベストセラー小説です。

26歳のゲーテ(1776年)
自由奔放な青年ウェルテルが、ある日美しい娘シャルロッテに恋するも、彼女には父親が決めた婚約者がいると知り、叶わぬ想いに絶望して自殺するという物語。作品は2部で構成されており、主に主人公ウェルテルが友人ヴィルヘルムに宛てた数十通の書簡によって構成されています。この物語は、ゲーテ本人が経験した恋愛と、ピストル自殺した友人のカール・イェルザレムの実話に基づいた小説として知られています。

偉大なるカウフマン!大成功の《ウェルテル》:現地メディア評

“オペラ界でいま最も高い人気を誇り、多彩な役を歌い、観客をワクワクさせるテノールであるカウフマンが、今回《ウェルテル》でさらなる成功を収めた…カウフマンはこの役にまさに打ってつけである。彼の歌声には仄暗い翳りがありながら、甘美な温かみがあり、雄々しい激しさ、そして力強い高音がある。
―ニューヨーク・タイムズ