《イル・トロヴァトーレ》《リゴレット》《椿姫》の成功のあと、1859年に《仮面舞踏会》を初演するまで6年間、成功作がなかったというヴェルディ。その《仮面舞踏会》を上演するまでの興味深い制作背景をまずは語って頂きました。
シェイクスピアの原作でオペラを作りたいと思いつつ、なかなかいい台本に出会わなかったこと、また本作が実際のスウェーデンで起きたグスタヴ王の暗殺が原案になっていることから、ナポリで厳しい検閲を受け、設定をボストンに変える必要に迫られ、現在もスウェーデン版とボストン版の2つが存在すること、また、登場人物が実際の史実に基づいている一方で、イタリアのオペラに欠かせない、愛の歌や二重唱を入れるため、暗殺された理由を政治的なものから、よりオペラ的に、友人である貴族の妻との恋愛によるものに変更したことなど、詳しく解説いただきました。
本作については、キーン先生は
「《仮面舞踏会》は《リゴレット》《椿姫》ほど人気がありませんが、客観的にいうと、より優れた作品だと私は思っています。専門家は『完璧なオペラ』だとよく言いますが、あらゆるものが本作にあります。特に、バリトンが王を罵るアリア〈お前だったのか〉は素晴らしく、またアメーリアと王の〈愛の二重唱〉はヴェルディの愛の二重唱でも一番優れていると思います。」
最後にヴェルディについて、以下のように語られました:
「今年はヴェルディの誕生200周年です。ヴェルディは一人の人間が創ったことが不思議なほど傑作が多く、初期の作品も面白く、退屈なものはありません。彼はイタリア統一の象徴的な人物でした。統一運動が始まった時に、ヴェルディの名前「ヴェルディ(VERDI)」を称えると同時に、当時、イタリア統一王として国民に嘱望されていた「イタリアの王たるヴィットリーオ・エマヌエーレ(Vittorio Emanuele Re D'Italia)」をたたえる言葉にもなっていたのです。ヴェルディが1901年にミラノで亡くなった時、10万人もの市民が彼の初期のオペラ《ナブッコ》の曲を大合唱しました。それほど大した人物で、それほど素晴らしい作曲家でした。皆さんも本作を聴きながら感謝してください。」
《仮面舞踏会》、《アイーダ》、《リゴレット》とヴェルディ作品が目白押しの今シーズンのMETライブビューイング。キーン先生が仰るように、ヴェルディが生まれてから200年経った現代でも、彼のオペラの感動を味わえることに感謝したいと思うトークショーでした!
《仮面舞踏会》、《アイーダ》、《リゴレット》とヴェルディ作品が目白押しの今シーズンのMETライブビューイング。キーン先生が仰るように、ヴェルディが生まれてから200年経った現代でも、彼のオペラの感動を味わえることに感謝したいと思うトークショーでした!