2013年5月10日金曜日

シーザーとクレオパトラ 運命の出会い


シーザー(カエサル)像
冒険ロマン溢れるオペラ《ジュリアス・シーザー》で描かれるのは、ローマの将軍シーザーとエジプト女王クレオパトラの運命の出会いです。シェイクスピアからハリウッドまで、常にクリエイターたちの創造力を刺激してきた歴史上最も有名な恋愛のひとつ。オペラをさらに楽しむために、その歴史的な背景を簡単にご紹介します。

オペラの舞台となるのは、オリジナルでは、紀元前48年のエジプトの首都・アレキサンドリアです。シーザー(オペラの「チェーザレ」)はローマ内戦でポンペイウス(オペラの「ポンペオ」)を破り、ローマを制圧。エジプトに逃亡したポンペイウスを追って、アレキサンドリアに向かいます。

クレオパトラとシーザー
(ジャン=レオン・ジェローム作 1866年)
そのころエジプトでは、プトレマイオス朝のクレオパトラ7世と弟のプトレマイオス13世(オペラの「トロメオ」)が共同統治しながらも、王座を争っていました。シーザーはアレキサンドリアに上陸して、自分が討つはずだった内戦の敵ポンペイウスがプトレマイオス13世の計略で殺害されたことを知ります。(「贈り物」としてプトレマイオス13世の家来が手渡した、かつての同志ポンペイウスの首を見て、シーザーは涙したと伝えられています。)

一方、クレオパトラはシーザーに密会するため、自らを絨毯にくるませて、シーザーのもとへ贈り物として届けさせ、シーザーを魅了したといわれています。クレオパトラと恋に落ちたシーザーは、ポンペイウスを殺害したプトレマイオス13世への復讐もあり、エジプトの覇権争いでクレオパトラ側について彼女を勝利に導きました。クレオパトラはエジプトの実権を握り、シーザーという最強の恋人も得て人生で絶頂の時期を迎えることになります。

オペラ《ジュリアス・シーザー》はこのような史実に基づきながら、ヘンデルの色彩豊かな旋律によって、ロマンスとアドベンチャーが時にコミカルに時にシリアスに描かれる稀有な作品です。デイヴィッド・マクヴィカーによる新演出では、紀元前1世紀のエジプトが、バロックの劇場の要素を取り入れながら、19世紀のイギリス帝国主義時代の設定に置き換えられます。イギリスが異文化の土地を植民地化していく時代を背景に、このオペラの持つロマンスと戦争、そして帝国建設の野望といったテーマを生き生きと描き出し、現代の観客を大いに楽しませてくれます!