アレクサンドル・ボロディン |
1833年、サンクトペテルブルグの貴族の私生児として生まれたボロディンは、ピアノ等の音楽も含め、幅広く優れた教育を受け、サンクトペテルブルグ医科大学に入学。優秀な成績で卒業後は、大学で医者として働きながら、化学の研究に没頭し、多大な業績を残します。代表的な業績のひとつに、現代の有機化学の教科書にも出てくる、「ボロディン反応の化学式」の発見などがあります。
ボロディンは化学者として公費で留学中の28歳のときに、結核治療のためサナトリウムに滞在していたロシア人ピアニストのエカテリーナ・プロトポポーヴァと出逢い、恋に落ち、のちに結婚します。彼女を通して、音楽の世界により広く触れることになったボロディンは、30歳になった頃に、ロシアの作曲家ミリイ・バラキレフと出会い影響を受け、ようやく、音楽の作曲法を学び始めるのです。
サンクトペテルブルグにあるボロディンの墓 |
第一線で活躍する化学者としての多忙な日々のなか、ロシアの伝統的な音楽を愛し、「日曜作曲家」として曲作りに心血を注ぎ、100年以上経った現代でも世界中の人々を魅了する名曲を遺した恐るべき「素人」、ボロディン。19世紀ロシアという激動の時代に、二足のわらじを履きこなし、自由闊達に、自らの可能性に挑戦し続けた彼の生き方は、現代を生き抜く私たちにも刺激と勇気を与えてくれます。