東条碩夫(音楽評論家)
ややこしい読み替え演出のスタイルなど、このオットー・シェンク演出の《マイスタージンガー》には、影も形もない。1993年のプレミエ以来、定番となっているプロダクションだけあって、実に観やすい。物語の舞台となっている16世紀ドイツの街ニュルンベルクを彷彿とさせるような写実的な舞台装置の中で、ドラマもオリジナルのとおりに展開される。演技も非常に細かいので、人間模様がよく解る。したがって、余計なことに煩わされず、ワーグナーの音楽を安心して楽しむことができる。
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ニュルンベルクの街 |