ソプラノのソンドラ・ラドヴァノフスキーに熱狂的な拍手喝采とブラボーの声が注がれた。感情をさらけだした大胆不敵な演唱で、極めて重要なアーティストがそのキャリアに偉大な金字塔を打ち立てた瞬間を観客たちは目撃したことを実感しているようだった。燃えるようなパワー、硬質な高音、鋭敏なコロラトゥーラのパッセージワークで、ラドヴァノフスキーは歌い上げる。METはまさに理想的なキャストと洞察力に富んだ指揮者 マウリツィオ・ベニーニを集結させた。最高のテノール マシュー・ポレンザーニの題名役は大変素晴らしく、彼の軽やかで気品ある歌声は青春の情熱を表現するのにぴったりだ。バリトンのマリウシュ・クヴィエチェンは雄々しい歌声と感情高まる歌唱で、親友の裏切りによって打ちのめされる公爵の戸惑いを巧みに表現した。そして、実に豪華なキャスティングなのは、偉大なメゾソプラノ エリーナ・ガランチャが、壮麗な歌声とカリスマ的な歌唱で、恋に苦しむ内気なサラ役を演じたこととだ。―The New York Times
マウリツィオ・ベニーニのボルテージの高い指揮に触発されたエネルギッシュなキャスト陣は、その死すべき運命があたかも冒険であり、人生の痛みとはあまりにも心地よい音楽のための価値ある代償なのだと思わせてくれる。マシュー・ポレンザーニは、その蜜のように光沢があり、ばねのようにしなやかなテノールの歌声、柔軟なフレージングと自信に満ちたピアニッシモで、死を前にした男の黙想を歓喜に溢れた陶酔の旅立ちへと変貌させる。きらびやかな魅惑の世界を欲するオペラの観客たちに、演出家のデイヴィッド・マクヴィカーは決して出し惜しみはしない。エリーナ・ガランチャは、やや内気なノッティンガム公爵夫人のサラをうっとりするほど美しく演じ、その自己憐憫に陥っている姿でさえ、観客を惹きつけてしまう。ソンドラ・ラドヴァノフスキーは、実際のエリザベス1世には許されなかった全ての荒れ狂う自由な感情を見事な歌声で表現し、無慈悲で後悔の念に苛まれる様でさえ、壮麗な場面にする。彼女のソプラノは、まるでビロードのように滑らかであり、鋼のように強靭で、歌唱の難易度が高くなるほど絶対に揺るがない女王の厳格な姿をみせつけた。―New York Magazine
写真(C)Ken Howard/Metropolitan Opera