2014年2月5日水曜日

《ルサルカ》指揮 ヤニック・ネゼ=セガン インタビュー

ルネ・フレミングが歌う《ルサルカ》で指揮台に立つ、若き俊英・ヤニック・ネゼ=セガンが本作への熱い想いを語るインタビュー。

Q:これまでのネゼ=セガン氏のMETでの上演演目は、フランスとイタリアのオペラの巨匠たち、ヴェルディ、ビゼー、グノーの作品です。今回、ドヴォルザークに取り組まれたのは?

A:私は12歳のころから、ブラームスの音楽の大ファンでした。ブラームスの音楽の魅力を発見していくなかで自然とドヴォルザークに導かれ、すぐに彼の音楽も好きになりました。生き生きとしたリズミカルな作風と相まった独特な抒情性は、心を捉えて離しません。彼の歌曲もまさにそうです―――若い頃、聖歌隊の一員として、ドヴォルザークのニ短調ミサ曲を歌ったのを覚えていますが、一瞬で心を奪われました。2012年にコヴェント・ガーデンのデビューに《ルサルカ》を振ったときは、大興奮でした。このオペラに取り組み、指揮をするたびに、作品への愛情が増していきます。

.主にオーケストラ作品で知られている作曲家のオペラを演奏するにあって、特にチャレンジややりがいはありますか?

A.一般的にあまり知られていませんが、ドヴォルザークはいくつかオペラを作曲しており、それは彼にとって非常に重要な取り組みでした。彼は常に、オペラ作曲家としての地位を確立するために努力していました。彼はオペラを通して、理想とする旋律、ボヘミア人としてのルーツ、そしてオーケストレーションの技法を生かせることが出来たのです。彼の交響曲の様式がオーケストラの作曲に大きな影響を与えており、指揮者として《ルサルカ》にはとてもやりがいを感じます。まさに、極めて素晴らしい交響詩に、崇高なインスピレーションが生みだす歌唱旋律を加えた作品に取り組むようなものです。二つの世界が見事に融合しているのです!具体的な難しさといえば、舞台上の歌唱をサポートしつつ、細かいリズムの音型を明確に描かなければならないところでしょうか。

Q.《ルサルカ》の〈月に寄せる歌〉は誰もが聞き覚えのある旋律のひとつですが、本作の他の聴きどころも教えてください。

A.本作ではオーケストラの豊かな色彩が紡ぐ詩的な情景が、ストーリーを強烈に物語ります。たとえば、〈月に寄せる歌〉では、ヴァイオリンとハープが繰り返し奏でる音型がありますが、それはオペラ全体を通して何度も現れて、月や風のイメージ、またルサルカの痛切な憧れや不安な気持ちを表現します。物語の流れのなかでこの表現があらわれる毎に、色合いが変わり、意味も変化するのです。ドヴォルザークのライトモティーフの使い方は独特です。そして、美しく、豊かな瞬間に満ち溢れています・・・まさに王子が歌う音楽がそうですね。このオペラのどこをとっても全てが大好きです!

Q.ルネ・フレミングは現在、ルサルカ役で最も評価が高い歌手です。彼女にぴったりのはまり役である理由は?

A.ルネ・フレミングが歌うと、全てが何でも魅力的な音楽になります。彼女のなめらかな光沢のある歌声と、ラインを自在に操る比類なき能力は、ドヴォルザークの音楽の優美で抒情的な魅力を引き出します。また、彼女の歌声に表現される様々な陰影が、主人公が抱える複雑な内面を見事に表現するのです。まさに、ルネとルサルカには人を惹きつけてやまない魅力があるのです。

聞き手: Matt Dobkin, Metropolitan Opera 
写真: (C) Ken Howard/Metropolitan Opera