マスネ作曲のオペラ《ウェルテル》の原作はゲーテの有名な小説『若きウェルテルの悩み』。1774年に刊行され、18世紀のヨーロッパを席巻し、ゲーテの名を世に知らしめたベストセラー小説です。
26歳のゲーテ(1776年) |
大学卒業後、ドイツのヴェッツラーで法律の勉強をしていたゲーテは、舞踏会でシャルロッテのモデルとなるシャルロッテ・ブッフと出逢い、恋に落ちます。地元の役人の大家族の2番目の娘として、妹と弟の面倒をよく見た家庭的なシャルロッテにゲーテは夢中になり、彼女の家を頻繁に訪れ、詩や手紙を何度も送ります。ゲーテは家の周りの人や弟妹からも慕われ、シャルロッテもそんな彼に好意を持ちますが、既に許嫁のいたシャルロッテは、ゲーテの熱烈な恋に誘惑されることはありませんでした。ゲーテは叶わぬ惨めな恋に耐えられなくなり、別れも告げず、突然ヴェッツラーを去ってしまします。
ヒロインのモデルとなった シャルロッテ・ブッフ |
この小説は瞬く間にヨーロッパ中で大流行となり、小説に出てくるウェルテルが愛用した黄色いチョッキと青いフロックコートや、シャルロッテの服装を真似る若者たちが続出。小説のモデルとなった人物が詮索され、ゲーテの友人・イェルザレムの墓は愛読者の巡礼地となったそうです。更には、ウェルテルを真似て自殺する者まで現れ、これが原因でいくつかの国ではこの本は発禁処分となりました。この社会現象から、社会学者フィリップスが命名した『ウェルテル効果』(マスメディアの自殺報道に影響されて自殺が増える事象)という言葉の由来にもなっています。
『若きウェルテルの悩み』初版扉 |
ゲーテの小説から約100年後、フランスで人気作曲家だったマスネは、その小説を読んで、「熱狂と恍惚に満ちた情熱に、思わず涙を流さずにはいられなかった」と語り、「素晴らしいオペラになる」と確信し、オペラ化に着手。《マノン》や《タイス》と並ぶ、彼の代表作となりました。
時代を超えて人類が読み継いできた、誰もが共感する恋の情熱と痛みを描いた稀有な名作『若きウェルテルの悩み』。オペラを鑑賞される際に、合わせて読んでみると、ゲーテ自身や主人公ウェルテル、そして、観客ひとりひとりの恋の思い出が重ね合わさり、より深い感動に出会えるかもしれません。ゲーテの原作では、最期にシャルロットが駆けつけることなく恋の悲劇は終わりを迎えます。今回の新演出のプロダクションでは、結末がどのように描かれているか・・・原作とオペラの舞台の違いも愉しみのひとつです。
時代を超えて人類が読み継いできた、誰もが共感する恋の情熱と痛みを描いた稀有な名作『若きウェルテルの悩み』。オペラを鑑賞される際に、合わせて読んでみると、ゲーテ自身や主人公ウェルテル、そして、観客ひとりひとりの恋の思い出が重ね合わさり、より深い感動に出会えるかもしれません。ゲーテの原作では、最期にシャルロットが駆けつけることなく恋の悲劇は終わりを迎えます。今回の新演出のプロダクションでは、結末がどのように描かれているか・・・原作とオペラの舞台の違いも愉しみのひとつです。