石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)
屋根裏部屋に住むミミは、蝋燭の灯を借りにロドルフォの部屋をノックする。風で灯が消え、真っ暗闇の中で二人の手が触れ合う。「なんて冷たい手、ぼくに温めさせてください」とロドルフォが歌い出し、それに応えてミミは〈私の名はミミ〉と自己紹介する。最高の聴きどころとなる2つのアリアだ。
こんな美しいラブストーリーの場合、演じる歌手はとても重要だ。声ばかりでなく、若さと容姿も絶対条件になるからだ。今回のプロダクションは若手で人気の美男美女ばかりが、ずらりとキャスティングされている。ロドルフォ役は輝かしい高音と情熱的な歌唱が持ち味の、甘いマスクのイタリア男、ヴィットーリオ・グリゴーロ。
ミミ役のクリスティーヌ・オポライスは、ラトビア出身で超一流歌劇場で活躍する実力派の美人ソプラノ。ライブビューイング収録当日は、予定されていたミミ役のアニータ・ハーティッグが流感でダウン。前夜《蝶々夫人》を歌ったばかりのオポライスに、翌朝オファーが入り、急遽代役をつとめたのだ。24時間に2つの役でMETにロール・デビューしたのは、MET史上初のことだという。
オポライスは緊迫感のあるよく透る声を持ち、演技力も抜群。楚々として芯のある、けなげなミミ役にぴったりで大喝采を受けた。ムゼッタは、いまやMETのアイドルになった若くキュートなスザンナ・フィリップスが好演。マルチェッロ役はイタリアの美声バリトン、マッシモ・カヴァレッティ。フレッシュな顔ぶれの若々しい華やかな舞台に、METは大興奮に包まれた。
ミミ役のクリスティーヌ・オポライスは、ラトビア出身で超一流歌劇場で活躍する実力派の美人ソプラノ。ライブビューイング収録当日は、予定されていたミミ役のアニータ・ハーティッグが流感でダウン。前夜《蝶々夫人》を歌ったばかりのオポライスに、翌朝オファーが入り、急遽代役をつとめたのだ。24時間に2つの役でMETにロール・デビューしたのは、MET史上初のことだという。
オポライスは緊迫感のあるよく透る声を持ち、演技力も抜群。楚々として芯のある、けなげなミミ役にぴったりで大喝采を受けた。ムゼッタは、いまやMETのアイドルになった若くキュートなスザンナ・フィリップスが好演。マルチェッロ役はイタリアの美声バリトン、マッシモ・カヴァレッティ。フレッシュな顔ぶれの若々しい華やかな舞台に、METは大興奮に包まれた。
激しくもはかない恋に酔いしれ、プッチーニの甘い旋律をじっくり味わいたい方、この《ラ・ボエーム》は必見です。
(c)Marty Sohl/Metropolitan Opera
(c)Jonathan Tichler/Metropolitan Opera