2014年5月6日火曜日

オペラ《ラ・ボエーム》とミュージカル『RENT』


若者たちの青春と悲恋を描くプッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》は、数多くの映画やミュージカルなどに影響を及ぼしてきました。なかでも、《ラ・ボエーム》が原案となった伝説のミュージカル『RENT』は、長年世界中で愛され、トニー賞やピューリッツァー賞も受賞、映画化もされた名作です。物語の舞台はオペラの1830年代のパリ、カルチェ・ラタンから、1990年代のニューヨーク、イーストヴィレッジへ―――。
設定が変わっても、心揺さぶる音楽で描かれる、若く貧しいボヘミアン(放浪芸術家)たちが、厳しい現実のなか、愛と生きる希望を見出し、懸命に生きる姿を描く青春群像劇が両作に共通した魅力です。1896年の《ラ・ボエーム》初演から、ちょうど100年後の1996年にオフブロードウェイで『RENT』が初演されました。登場人物の設定などを比較してみると、時代背景や病気やドラッグなどの社会問題が反映され、興味深いです:

《ラ・ボエーム》 ・・・『RENT』

ロドルフォ・・・売れない詩人。屋根裏部屋に仲間4人と住む。クリスマス・イヴの夜、ロウソクの火を借りに来たミミと一目で恋に落ちる。
ロジャー・・・元ロックバンドのボーカル。ミュージシャン。ヘロイン中毒から足を洗うもHIVに感染。ロウソクの火を借りに来た階下に住むダンサーのミミと惹かれあう。

マルチェッロ・・・売れない画家。ロドルフォと同じ部屋に住む。貧乏暮らしのため恋人のムゼッタに捨てられたが、彼女を忘れられない。
マーク・・・映像作家。ロジャーとルームシェアしている。元恋人のモーリーンが忘れられない。ユダヤ系。
 
ミミ・・・お針子。結核を患っている。
ミミ・・・ダンサー。ロジャーの階下に住む。ヘロイン中毒でHIVに感染している。ヒスパニック系。

ムゼッタ・・マルチェッロの元恋人。パトロンの老紳士・アルチンドロの愛人。
モーリーン・・・パフォーマー。マークの元恋人。バイセクシャルで現在の恋人は女性弁護士のジョアン。

コルリーネ・・・哲学者。ロドルフォと同じ部屋に住む。
コリンズ・・・コンピューターの天才で、破天荒な哲学者。ロジャーとマークの元ルームメイト。HIVに感染。ゲイ。エンジェルと恋に落ちる。アフリカ系。

ショナール・・・音楽家。ロドルフォと同じ部屋に住む。食糧調達係的な存在。
エンジェル・シュナード・・・ストリートドラマーのドラァグクィーン。HIVに感染。コリンズの恋人。ヒスパニック系。

貧しい若者たちが寒さをしのぐために暖炉で台本を燃やす場面や、大家が家賃(Rent)を取立てに来るシーン、ロウソクの火を借りに来たミミとロジャー(ロドルフォ)の手が触れ合う出会いの場面、「カフェ・ライフ」(カフェ・モミュス)での活気に満ちた若者たちの大騒ぎなど・・・『RENT』には《ラ・ボエーム》へのオマージュが溢れています。ミュージカルの主題歌「Seasons of Love」の歌詞にも、《ラ・ボエーム》の恋人たちの姿が重なり、オペラを観ることで、より深く心に響く作品です。手近に映画版『RENT』もありますので、ぜひこの機会に両作を見比べてみてください!

METライブビューイング 《ラ・ボエーム》日本上映
5月10日(土)~5月16日(金)

「RENT/レント」(上記写真)
発売元:パラマウント・ジャパン
Blu-ray:2,381円+税
DVD:1,429円+税
発売中
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